秋田銀行グループのサステナビリティ経営への取組み
当行は、「秋田銀行グループ サステナビリティ経営方針」のもと、地域課題・社会課題の解決を通じた地域および当行グループの持続的成長に向けた取組みを一層推進してまいります。
秋田銀行グループ サステナビリティ経営方針
秋田銀行グループは、「地域共栄」の経営理念のもと、地域課題の解決および環境課題への対応、お客さまのニーズに応える質の高い金融・非金融サービスの提供を通じて、将来にわたる豊かな地域を実現するとともに、当行グループの持続的な成長・企業価値向上を実現し、地域から必要とされる金融グループになることを目指します。
重要課題(マテリアリティ)
マテリアリティの特定プロセス
SDGsの理念・主要原則等から、地域特有の課題等、社会課題を洗い出しました。そのうえで、ステークホルダーにとっての重要度、当行グループにとっての重要度・優先度を、経営理念、グループVISION、中期経営計画等を活用して整理・評価し、取締役会での協議を経て決定しました。
優先的に取り組む重要課題 (マテリアリティ) |
秋田銀行グループVISION 第1フェーズ 中期経営計画での主な取組み |
関連するSDGs | |
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地域課題の 解決 Community Values |
■人口減少 ■少子化 ■高齢化 ■デジタライゼーション ■価値観の変容 ■金融インフラの維持 |
○起業・創業支援、後継者不足への対応 ○地域商社事業 ○人材支援事業 ○DX ○長活きプロジェクト ○ビジネスパートナー、ライフパートナーへ向けた取組み(お客さまの多様なニーズへの対応) ○対面・非対面チャネルのベストミックス |
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環境課題への対応 Green Values |
■気候変動 ■地球温暖化 |
○カーボン・ニュートラルへの対応 |
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経営の基礎的要素 fundamentals |
■コーポレートガバナンス ■コンプライアンス ■リスクマネジメント ■人財価値の向上 ■人権の尊重 |
○人財価値の最大化、成長・活躍のフィールドづくり、働きがい・エンゲージメント向上、人権の尊重 ○コーポレート・ガバナンスの高度化 ○マネー・ローンダリングへの対応 |
気候変動への対応(TCFD提言への取組み)
当行では、地域社会の持続可能性を高めるために、環境課題への対応を経営の重要課題(マテリアリティ)と認識し、中期経営計画の地域価値共創戦略において、カーボンニュートラルへの対応をはじめ、具体的な取組みを進めています。
- 頭取を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」において、気候変動対応に関する協議を年4回の頻度で開催し、重要な事項については、取締役会に報告のうえ監督を受ける体制を構築しています。
- 同委員会における協議および取締役会における審議の内容は、経営企画部内に設置したサステナビリティ推進室が取りまとめ、同室が主導して具体的な取組みや施策等を全社横断的に推進する体制を構築しています。
- 2023年度においては、当行グループのカーボンニュートラル実現ならびにお客さまへの脱炭素化支援に関する事項などについて協議し、取締役会へ内容を報告しております。
気候候関連リスクと機会は、事業活動に大きな影響を与える可能性があるため、当行では、気候変動シナリオ分析によるリスク量の把握に取り組んでいるほか、脱炭素社会への移行を新たなビジネスチャンスと捉えて、お客さまの気候変動への適応とその影響の緩和に資する金融商品ならびにサービスの開発・提供に取り組んでおります。
区分 | 事例 | 時間軸 |
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移行 リスク |
脱炭素化に向けた事業環境の変化にともない、お客さまの業態が悪化することによる当行の与信コストの増加 | 中期・ 長期 |
CO2削減対策や事業継続性強化のための設備費用の増加 | 短期・ 中期・ 長期 |
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気候変動への対応不足やステークホルダーからの情報開示要請への遅れによる評判の悪化 | 短期・ 中期・ 長期 |
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物理的 リスク |
洪水等の自然災害の増加によるお客さまの事業停滞・担保価値の毀損にともなう当行の与信コストの増加 | 短期・ 中期・ 長期 |
自然災害等による当行営業拠点の被災にともなう当行資産の毀損およびオペレーショナルリスクの増加 | 短期・ 中期・ 長期 |
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機会 | 再生可能エネルギー関連事業をはじめとする脱炭素社会への移行に向けた取組みの進展にともなう資金需要の増加 | 短期・ 中期・ 長期 |
お客さまの脱炭素への移行を支援するコンサルティング機会の増加 | 短期・ 中期・ 長期 |
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省資源、省エネルギー化による事業コストの低下 | 短期・ 中期・ 長期 |
※時間軸…短期:5年程度、中期:10年程度、長期:30年程度
(1)リスクへの対応
気候変動リスクが、当行財務へ及ぼす影響を定量的に把握するため、移行リスクおよび物理的リスクに関するシナリオ分析を実施しています。
なお、シナリオは、多くの企業や国が目標として掲げる「2050年カーボンニュートラル」で想定される世界観の1.5℃シナリオ(移行リスク)と、現状予想される以上に気候変動対策が進まず、水害をはじめとする自然災害のリスクが顕在化する4℃シナリオ(物理的リスク)により分析を行っています。
【移行リスク】
移行リスクでは、脱炭素化による影響が特に大きいと考えられる「電力」、「石油・ガス」セクターのほか、当行のエクスポージャーや秋田県内への影響度等を踏まえて、食品製造業に関連する「食品・飲料」セクターを加えた3セクターに対する与信コスト増加額を推計しております。
- 分析対象セクターの選定プロセス
- 分析概要
シナリオ | NGFSによる「NetZero2050(1.5℃シナリオ)」 |
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対象セクター | 電力、石油・ガス、食品・飲料 |
分析方法 |
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分析期間 | 2050年まで |
分析結果 | 与信コストの増加額:累計17億円程度 |
【物理的リスク】
物理的リスクでは、国内の法人を対象にIPCCの4℃シナリオに基づき、100年に1度の規模の洪水が発生した場合の当行の担保物件への被害額とお客さまの事業停止・停滞日数を算定し、お客さまの事業に及ぼす影響をもとに、当行の与信コスト増加額を推計しております。
シナリオ | IPCCよる「RCP8.5シナリオ(4℃シナリオ)」 |
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対象セクター | 国内に本店を置く法人融資先 |
分析方法 | ハザードマップを利用して当行担保不動産の毀損額およびお客さまの事業停止日数を予想し、お客さまの事業への影響ならびに与信コストへの影響を推計 |
分析期間 | 2050年まで |
分析結果 | 与信コストの増加額:最大41億円程度 |
(2)機会への対応
脱炭素社会の実現に向けて、さまざまな気候関連リスクが想定される一方で、再生可能エネルギー分野への投融資の増加、お客さまの脱炭素への移行を支援する金融商品やサービスの提供など、当行にとってのビジネス機会は拡大していくものと認識しております。
- 再生可能エネルギー関連事業への取組み
秋田県は、日本海の恵まれた風況を背景に、洋上風力発電の整備を促進する区域として全国最多となる4海域の指定を受け、他地域に先駆けて事業開発が進められております。秋田県沖の洋上風力発電プロジェクトにかかる総事業費は、およそ1兆円規模と試算されており、脱炭素社会実現のほか、県内経済への波及効果にも注目が集まっております。
当行では、こうした再生可能エネルギー関連事業が、地域経済の発展や脱炭素への移行に資する重要な取組みであると捉え、2013年に設立した風力発電事業会社「A-WIND ENERGY」の主体的な運営をはじめ、脱炭素先行地域(大潟村)への人的支援など、ファイナンスにとどまらない取組みを多角的に進めております。
今後も積極的なファイナンスのほか、風力発電設備の建設やO&M業務における事業会社と地元企業とのマッチング、県内産業の活性化に向けた連携等を通じて、地域の経済効果の最大化に取り組んでまいります。
■ 再生可能エネルギー関連融資の累計実行額
電源別 | 2021年3月末 | 2022年3月末 | 2023年3月末 | 2024年3月末 |
風力 | 270 | 368 | 491 | 584 |
太陽光 | 260 | 315 | 374 | 456 |
バイオマス・地熱ほか | 34 | 37 | 57 | 67 |
合 計 | 564 | 720 | 922 | 1,107 |
- 森林資源・J-クレジットの活用
森林資源に対しては、世界的な人口増加にともなう木材需要の増加に加え、気候変動・生物多様性の観点から非常に大きな関心が寄せられております。全国有数の森林面積を誇る秋田県では、豊かな森林資源を活用したJ-クレジットの創出が進められており、当行では、こうした取組みが地域の脱炭素化をはじめ、地元林業の活性化や森林資源の保全につながる重要な取組みであると認識し、2023年度に大仙市および丸紅株式会社とJ-クレジット創出・販売に向けた連携協定を締結しております。同連携協定をはじめ、森林資源を起点とした新たなビジネスモデルの構築と地域経済・環境価値の域内循環に向けた取組みを進めてまいります。
(3)炭素関連資産
炭素関連資産は、一般的に直接的または間接的なGHG排出量が比較的高い資産または組織とされており、当行では次のセクターに関連する資産を炭素関連資産としております。
セクター | 主な業種 | 貸出金(百万円) | 比率(%) |
エネルギー |
|
16,712 41,808 |
0.9 2.2 |
小 計 | 58,519 | 3.0 | |
運輸 |
|
686 1,438 26,386 20,735 32,055 |
0.0 0.1 1.4 1.1 1.6 |
小 計 | 81,300 | 4.2 | |
素材・建築物 |
|
20,825 23,997 2,860 136,154 65,390 |
1.1 1.2 0.1 7.0 3.4 |
小 計 | 249,226 | 12.8 | |
農業、食料、林産物 |
|
6,647 5,185 20,270 24,592 |
0.3 0.3 1.0 1.3 |
小 計 | 56,694 | 2.9 | |
上記セクター合計および貸出金に占める割合 | 445,739 | 22.9 |
(注)
-
主な業種は、当行が取引先ごとに設定している主たる業種コードをGICS(世界産業分類基準)に読み替えて分類しています。
なお、再生可能エネルギー関連の事業は炭素関連資産に含めておりません。 -
貸出金は、2024年3月末時点において該当する法人の事業性貸出(割引手形、手形貸付、証書貸付、当座貸越)の残高としています。
- 当行では、気候変動リスクが地域経済や当行の事業、財務面に大きな影響を与える可能性のある重要なリスクであると認識しています。このため、環境や社会に対して大きな影響を与える可能性のある事業に対しては、「特定事業等に対する融資方針」を定め、本方針に基づき適切に対応することで、環境・社会への影響を低減・回避するよう努めています。
- シナリオ分析により認識したお客さまの気候変動リスクについては、地域やお客さまの脱炭素化への取組み支援や当行のリスク低減に向けて、お客さまとの対話(エンゲージメント)に活用してまいります。今後は、シナリオ分析の高度化をはかりながら、気候変動リスクの定量的な把握を進め、統合的リスク管理への組み入れについても検討してまいります。
- 当行では、気候変動リスクと機会に適切に対応するための長期目標として、CO2排出量削減目標ならびにサステナブルファイナンス目標を設定しています。
CO2排出量削減目標
(1)Scope1、2
当行グループでは、2013年度を基準として、当行グループ全体のCO2排出量(Scope1、Scope2)を2024年度50%削減、2030年度ネット・ゼロとする目標を掲げております。2023年度は、設備投資等をはじめとした省エネへの取組みにより、2013年度比の削減率は34.7%となり、順調に削減が進んでおります。
引き続きエネルギー使用量の削減に向けて、全行をあげて省エネ化に取り組むほか、必要な設備投資を積極的に行いながら、目標達成に向けて取り組んでまいります。
<Scope1,2 実績推移>
(単位:t-CO2)
計測項目 | 2013年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
実績 | 実績 | 実績 | 実績 | ||||
CO2削減量 (2013年度比) |
CO2削減率 (2013年度比) |
||||||
Scope1 | 1,724 | 1,290 | 1,146 | 1,064 | ▲660 | ▲38.3% | |
Scope2 | 6,587 | 4,814 | 4,793 | 4,366 | ▲2,221 | ▲33.7% | |
Scope1-2合計 | 8,311 | 6,104 | 5,939 | 5,430 | ▲2,881 | ▲34.7% |
(2)Scope3
当行では、サプライチェーンにおける排出量(Scope3)の把握に向けて、2023年度より次のカテゴリーを対象にCO2排出量を算定しております。今後も算定対象範囲の拡大や排出量把握の精緻化に努めてまいります。
<Scope3 カテゴリー別>
(単位:t-CO2)
計測項目 | 2023年度 | ||
---|---|---|---|
Scope3 | カテゴリー1 | 購入した製品・サービス | 5,981 |
カテゴリー2 | 資本財 | 1,725 | |
カテゴリー3 | Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 | 764 | |
カテゴリー4 | 輸送、配送(上流) | 168 | |
カテゴリー5 | 事業活動から出る廃棄物 | 61 | |
カテゴリー6 | 出張 | 174 | |
カテゴリー7 | 雇用者の通勤 | 500 | |
カテゴリー15 | 投資 | 2,623,707 |
- ファイナンスド・エミッション
投融資を通じた間接的な温室効果ガス排出量は、金融機関におけるScope3の中で大きな割合を占めており、これを算定のうえ、モニタリングや削減への取組みを進めることが重要となります。当行では、2023年度よりPCAFスタンダードの計測手法を参考に、国内法人向けの融資を対象としてCO2排出量を算定しております。また、推定排出量の品質を評価するためのデータクオリティスコアは、加重平均値で約3.4となっております。
なお、今回の算定結果については、国際的な基準の明確化や推計の高度化等により、今後大きく変化する可能性があります。
セクター | 炭素強度 (t-CO2/百万円) |
排出量 (t-CO2) |
---|---|---|
石油及びガス | 1.38 | 86,629 |
電力ユーティリティ | 11.62 | 322,850 |
旅客空輸 | 5.98 | 2,721 |
海上輸送 | 13.30 | 4,189 |
鉄道輸送 | 0.98 | 13,705 |
トラックサービス | 1.61 | 102,805 |
自動車及び部品 | 0.29 | 44,311 |
金属・鉱業 | 7.67 | 102,497 |
化学 | 2.49 | 71,436 |
建設資材 | 5.29 | 46,467 |
資本財 | 0.41 | 561,781 |
不動産管理・開発 | 0.78 | 12,600 |
飲料 | 1.16 | 20,027 |
農業 | 9.05 | 29,042 |
加工食品・加工肉 | 0.88 | 110,125 |
製紙・林業製品 | 10.72 | 248,078 |
その他 | 0.34 | 844,444 |
合 計 | 2,623,707 |
(注)
-
投融資先の排出量(ファイナンスド・エミッション)は、投融資先の資金調達総額に占める当行の投融資額の割合(アトリビューション・ファクター)に投融資先の排出量を掛け合わせて計算しております。
なお、プライム市場上場企業で自社ホームページ等において排出量を開示している場合は開示情報、それ以外の企業については推計値を使用しております。 -
炭素強度は、Σ取引先企業のCO2排出量/Σ取引先企業の売上高により計算しております。
サステナブルファイナンス
当行では、環境課題や社会課題の解決ならびに持続可能な社会の実現に資する投融資をサステナブルファイナンスと定義し、2022年度から2030年度までの間に計5,000億円の実行を目指しております。2022-2023年度までの累計実施額は、1,270億円(うち、環境分野942億円)となっております。
「サステナブルファイナンス」の対象分野 | |
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環境分野 |
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社会分野 |
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なお、当行は、日本銀行「気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション」の貸付対象先に選定されています。
特定事業等に対する融資方針
当行は、「秋田銀行グループ サステナビリティ経営方針」を制定し、環境課題や社会課題に向き合い、地域の持続的な発展に取り組んでおります。
環境課題や社会課題の解決、持続可能な社会の実現に資する事業等に対して積極的に支援するとともに、融資に取り組むことで環境や社会にマイナスの影響を与える可能性がある特定の事業等に対して、次の融資方針を定めております。
<環境への影響>
1 気候変動への対応
石炭火力発電所の新規建設を資金使途とする融資は、原則として取り組みません。
発電効率など、環境への十分な配慮をともなう案件については、環境に対する影響等を総合的に勘案し、慎重に検討します。
2 環境の保全
違法な森林伐採や生物多様性の毀損につながる開発等、環境に重大なマイナスの影響を与える可能性のある融資は、取り組みません。
<社会への影響>
1 人権侵害等の防止
人身売買、児童労働または強制労働に関与する事業者に対する融資は、資金使途を問わず、取り組みません。
2 非人道的兵器の排除
対人地雷、クラスター弾等の非人道的な兵器の製造に関与する事業者に対する融資は、資金使途を問わず、取り組みません。
SDGsとは
2015年9月に国連サミットで採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)のことです。
「地球上の誰一人として取り残さない」(leave no one behind)ことを目指し、2030年までに解決すべき17の目標と、目標を達成するための169のターゲットから構成されています。